中津川市付知町の木製オーダー家具工房「然(ZEN)」の内木勇代表=写真右=が、人気若手歌舞伎役者・尾上右近さん(32)=写真中=の鏡台を製作。「踊りの神様」と呼ばれた曽祖父・六代目尾上菊五郎の鏡台を再現したもので、各方面から注目を集めています。
右近さんの祖父は昭和の大スター・鶴田浩二さん、父は清元の名門家元。鏡台贈呈は、前代未聞の歌舞伎と清元の“二刀流”で活躍する右近さんを応援する日本木材青壮年団体連合会の任意サークル「歌舞伎部会」が企画。歌舞伎役者は専用の鏡台を各公演場に持参。その前で独特の化粧を施しながら役に入り、苦楽を共にする「生涯の相棒」だからです。
そこで希少な天然木曽ヒノキを岐阜県東濃木青会の会員が調達し、中央でも高く評価されている内木代表が製作することに。ところが六代目の鏡台を採寸するため、早稲田大学演劇博物館に足を運ぶと、保管されていたのは昭和23(1948)年に作られた“文化財”。
「高度な職人技の結集を現代の技術で再現するのは無理」と驚愕しましたが後に引けず、右近さんの舞台を見て自らを鼓舞。日本クラフト展大賞を受賞した「mageita stool」の技法を使って、右近さんが演じる女形のしなやかさ、繊細さを表現するなど、試行錯誤しながら取り組むこと2年5カ月。
神奈川県箱根町の寄木細工なども取り入れて「六菊龍粧臺(おとにきくうこんのけしょうだい)」を完成させ、先月、東京の木材会館に展示後、右近さんに贈呈。内木さんは、「『想像以上』と喜んでいただき冥利に尽きます。この鏡台とともに歳を重ねていく右近さんを応援し続けたい」と話していました。