東濃地域の地歌舞伎を背負って立つ歌舞伎振付師・伊藤麻里さん(48)=中津川市本町=が、ユネスコ無形文化遺産・長浜曳山祭(滋賀県)の振付師に「初の四十代女性振付師」として大抜擢。快挙を後押ししたのは一丸となって地歌舞伎を支える家族でした。
伊藤さんが歌舞伎と出会ったのは小学3年の時。急きょ頼まれ出演した舞台が絶賛されたのがきっかけで虜になり、東濃歌舞伎中津川保存会に不可欠な存在になりました。地域の地歌舞伎6団は、体師匠の中村さん(91)=恵那市=と四代目中村の故吉田茂美さん=中津川市=が指導にあたっていましたが、8年前、吉田さんが60歳で急逝。40歳の伊藤さんが、その重責を担うことになったのです。「この世界ではまだ若すぎて、経験不足だった」伊藤さんは各団体を回り始めたものの、「女性ということもあって四代目津多七のようにはゆかず」苦悩。42歳の時、「うまくなりたい」一心で京都の振付師岩井小紫師匠師事を仰ぎ、その弟子たちのレベルの高さに驚愕。「井の中の蛙だったと思い知らされ」、必死で一から学び直してきたといいます。
地歌舞伎一家
妻のひたむきな姿に影響を受けた夫の龍太さん(49)は、歌舞伎、人形浄瑠璃に付き物の義太夫三味線を学び奏者に。母が稽古するセリフと父の三味線の音を聞いて育った中学2年の長男・花道さん(13)は11歳、小学4年の長女・小粋さん(10)は5歳で歌舞伎デビュー。役者から三味線、裏方の仕事まで学び親子で共演するなど、家族そろって歌舞伎に携わり、伊藤さんの原動力となっています。19日の恵那市伝統芸能大会をはじめ各地の歌舞伎、人形浄瑠璃公演、4月の長浜曳山祭に向けて全力投球する伊藤さん。「大きなチャンスを頂いたのを機に一層芸を磨き、当地域の歌舞伎がさらに発展、伝承されるよう努めていきたい」と意気込みを語っています。