「日本初の発電用ダム」とも言われ、この地域に近代化と観光名所「恵那峡」をもたらした大井ダム着工から100年。その工事に携わったアメリカ人技師の妻がきっかけで、「日本のシクラメン栽培発祥の地」となった恵那市東野を全国に発信しようと、地元在住の作詞家・熊たけしさんが作詞。田口修さん=岩村町=が作曲した楽曲が誕生しました。
大井ダム建設とシクラメン栽培
日本におけるシクラメン栽培の創始者は、恵那市東野の花き農家・伊藤孝重さん(1897年—1992年)。東野で生活しながら大井ダム建設に携わっていたアメリカ人技師の妻の勧めで、ドイツから種子を輸入して栽培に着手。丹精と工夫を重ねて大正12(1923)年、栽培を成功させ、国内外に販路を広げてシクラメン栽培の先駆者に。昭和に入ると千藤恩三・猛司父子が事業を拡大し、東野が一大生産地となったのです。
現在、東野では生産されていませんが、その技術と伝統は、市内と中津川市の生産者が継承。東野交差点脇には「シクラメン街道」の石碑が建っています。
歌で「シクラメン栽培発祥の地」アピール
著名歌手の作品を数多く手掛けてきた熊さんは、仕事で神奈川県を訪れた際、花屋の店頭に並ぶシクラメンを見て褒めたところ、店主に「ここが発祥の地です」と言われ、“自称・発祥の地”が多数あること実感。
そこで、「シクラメン栽培発祥の地・東野」を全国にアピールしようと作詞したのが『月からの使者』。月を「西洋から東野に伝わった」シクラメンになぞらえ、「槌音が ダム現場に—」などのフレーズで大井ダム建設との関わりを表現。10年以上そのままにしていましたが、2年後、大井ダム完成100年の節目を迎えるのに合わせ、田口さんに作曲を依頼。伊藤さんの没後30年となる今年完成させ、YouTubeで公開しました。「再来年までに地元から歌い手を公募し、本格的にレコーディングできれば」と熊さん。「歌で地元の歴史的・文化的財産を伝えたい」と話しています。
写真=作詞した熊たけしさん(中央)と作曲した田口修さん(右)、「シクラメン街道」の石碑建立に尽力した遠藤龍美さん(左)。