一昨年、国内では26年ぶりに岐阜県で発生し、強い伝染力と高い致死率で養豚農家に大打撃を与えた豚、イノシシのウイルス性伝染病「豚熱」。中津川市落合の吉野ジーピーファーム中津川農場では、この“豚熱禍”を新型コロナウイルス並の感染予防策で克服。中津川産の栗で育てたブランドポーク「栗旨豚」の出荷を1年ぶりに再開しました。
県養豚協会会長を務める同社(本社・高山市)の吉野毅社長(59)の信念は、「安全・安心で健康な豚はうまい」。
そのため飼料にオレイン酸を多く含む玄米を20㌫、食物繊維の多い麦を30㌫以上配合し、EM菌を添加。繁殖から手掛け、子豚の誕生から出荷まで、抗生物質・合成抗菌剤・ホルモン剤を一切使用していません。
そのため全身を石鹸で洗い着替えてからでないと農場に入ることはできず、持ち込む物は、伝票に至るまで紫外線で殺菌。1人10足近い長靴を場所によって履き替え、あらゆる施設前には水槽・消毒液槽が設置されています。
イオンが主な取り引き先ですが、2009年には「飛騨旨豚」ブランドで売り出し、東京の紀ノ国屋をはじめとする有名店に進出。伝染病リスク軽減のため、2013年に中津川市、今年は白川村に農場を新設し、常時、計約1万頭を飼育、年間2万頭出荷を目指しています。
中津川農場開設に際し、真っ先に吉野社長の胸に浮かんだのは、特産の栗を与えた“ご当地豚”で地域に貢献したいという思い。早速、JAひがしみのなどの協力を得て、味に問題はないが傷や虫食いで出荷できない栗を購入。約3000頭の中から選ばれた200頭ほどのメス豚に、出荷の1カ月前から毎日、200㌘以上のむき栗を食べさせ、「栗旨豚」として出荷。
福岡のラピアをはじめとするAコープなどで販売して好評を得、地元の飲食店や料亭でも使われるまでになりました。
ところが昨年は豚熱の感染が拡大したため、イノシシのウイルスが栗を介して感染する危険性から中止。ある程度落ち着いた今秋は、栗を燻蒸してウイルスを死滅させる施設を新設=写真下。栗旨豚を復活させたのです。
吉野社長は「中津川産のおいしい栗ですから豚は大喜び。柔らかくジューシーな肉になり、東京のイベントなどでも大好評です。中津川ブランドの1つとなって地元に貢献できるよう努めたい」と意欲を燃やしています。
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