恵那市三郷町野井出身の医師・市川敏男さん=名古屋市=が、故郷の天長寺に梵鐘を寄進。80余年ぶりに野井地区に鐘の音が響きわたりました。
市川さんは地元の旧家の末子として誕生。地元の小・中学校、恵那高校を経て名古屋大学医学部に進み、卒業後は名古屋逓信病院に勤務し、令和元年、瑞宝小綬章を受章。「故郷に何かの形で恩返しがしたい」という想いから、先祖代々、檀家総代を務めてきた天長寺に、「平和の象徴」とされる梵鐘を寄進することにしました。
同寺は、岩村藩丹羽氏ゆかりの古刹。しかし、第二次世界大戦が激化した昭和16(1941)年頃、武器の資材として梵鐘を供出。地区内の別の寺も同様で、野井では80年以上、鐘の音が途絶えていたのです。
凛然と品格を漂わせる梵鐘には、市川さんの想いを受けた森知孝住職が、人々の幸せを願い、疫病退散を念じて書いた銘文が金文字で記されています。
4月12日、同寺の大般若祈祷法要を前に、市川さん夫妻を迎えて梵鐘法要が行われ、寺の役員らにお披露目。読経の後、交代で鐘楼門に登って初鐘を打ち、70代の男性は「立派な鐘楼はあっても梵鐘を見たことがなかったので、本当にうれしい」と喜びを語っていました。
森住職から市川さんにお礼の言葉と感謝状が贈られた後、同寺総代長の宮地政臣さんが、「長年途絶えていた除夜の鐘を今年から復活させ、“幸せの鐘”として打ち続けていきたい」とあいさつ。
市川さんは「豊かな自然に包まれて生まれ、育ち、学んだふるさとに感謝し、皆様の末永い幸せを願って寄進させていただきました」と話していました。