コロナ禍で困窮する、子育て中の家庭等を支援しようと、恵那市のNPO法人「みんなで子育てドロップス」が食材を無料配布する「子育てフードパントリー」に取り組んで2年。地方ならではの「田んぼと畑と台所を土台とした」活動は、「経済的困窮者支援+食品ロス削減」にとどまらず、“地域コミュニティーの復活”に発展しています。
同団体(牧野香理事長)は2005年、子育て中の母親有志で設立し、相互援助で子育てを支えるファミリーサポートセンター事業(会員数800人)、市から受託した福祉事業等を運営。食料支援のきっかっけとなったのは、独自の学習支援事業でした。
「長期休暇になるとやせる」子どもたちの存在が問題になっていたところへ2020年、コロナ禍で臨時休校が続くと、さらに子どもたちの食料事情が悪化。ほとんどが不安定な就労状況下で働くひとり親家庭のため、コロナ禍で収入が減少。そこに食費の増加で経済的に困窮していることも分かり、フードパントリー事業に踏み切ったのです。
18歳以下の子どもがいて困窮した家庭であれば、居住地に関わらずだれでも利用可能。予約すれば毎月第三木曜日の夕方、木ポイント(長島町)内ログハウスの同団体事務所で、用意された食品を無料で受け取ることができる仕組み。緊急事態宣言下では、感染防止のため、ドライブスルー方式で配布しました。
●地域コミュニティーの回復へ
当初は、食料の提供先の開拓や農家の廃棄野菜受け入れシステムづくりなどで東奔西走。恵那NEW FARMERS交流会議に所属する農家や生協、フードバンク等の協力を得て次第に食料の提供先が増え、登録者も80人と増加しています。
昨年度は厳しい審査を経て休眠預金等活用助成事業の対象となり、さらに協力者が拡大。牛丼チェーン「吉野家」は、毎月、牛丼130食を提供。コンビニチェーン・ファミリーマートとは、家庭等の余剰食品を持ち寄って提供してもらうフードドライブ(恵那高校前店・恵那正家店)提携しました。
畑を提供する農家も現れ、1月20日に配布したネギはスタッフが栽培。契約農家はイベントにも協力し、中津川市のイチゴ農家では、脇芽摘み作業を体験した子どもたちがイチゴ狩りを楽しませてもらうなど、新たな交流が生まれています。
牧野理事長は、「利用者から多くの喜びの声が寄せられ、お米を提供してくださる農家さん、自治会ぐるみで協力してくださる町内など、失われつつあった『向こう三軒両隣』のお付き合いが復活し、広がっているようでうれしい。アンケート等から、まだ本当に必要とする人に行き渡ってはいないので、今後の展開を考えていきたい」と話しています。