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「飾ると良いことが跳ね込む」とされる「春駒(はるこま)」は、正月や春の訪れを祝う縁起物。稲わらで馬の姿をかたどった素朴な郷土玩具で、五穀豊穣や無病息災などの願いが込められ、お守りとしても親しまれてきました。その春駒を、今も手仕事で作り続けているのが、中津川市馬籠で“唯一の継承者”とされる大脇幸子さん(79)。今年は午年とあって昨年末から注文が急増。制作に追われています。
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大脇さんが同市苗木から馬籠荒町に嫁いだ昭和45(1965)年当時は、空前の「木曽路ブーム」。馬籠・妻籠の古い町並みが全国的に注目を集めて中山道ウオーカーが押しかけ、通りに面した家々では現在の馬籠宿メイン通り同様、軒先に土産物を並べて観光客に販売していました。
大脇さんの嫁ぎ先も家族が作ったわら草りなどを商っていましたが、姑から当時評判を集めていた春駒の作り方を習ってくるよう言われ、「馬籠の名人」と呼ばれた女性のもとへ。一から手ほどきを受けました。
最も難しいのが出来栄えを左右する頭の部分で、たてがみがピンと立ち、きれいにそろうように仕上げるには熟練の技が必要。1日かけても大(高さ約18センチ)は10頭、小でも25頭ほどしかできず、さらに近年はコンバインで稲刈りをするため、わらの確保にも一苦労。昔は何人かいた作り手も次第に姿を消し、今では大脇さんが地元の温泉施設と土産物店からの注文を一手に引き受けています。
大脇さんが作る春駒は、馬の顔がやや上を向いているため「上向きで縁起がいい」と評判。稲わらに願いを込めて生みだす一頭一頭が、「幸せ」を運んでくれそうです。
