
「あぎみそ・しょうゆ」で地域の食卓を豊かにしてきた中津川市阿木広岡の広岡農産加工センターが、3月8日の仕込みを最後に、生産を中止。昭和初期から続いてきた中組の味噌づくりが、95年の歴史に幕を下ろします。超熟成3年味噌を含む、在庫がなくなり次第廃業。
女性の冬場の仕事をつくるため、昭和5(1930)年、中組の22世帯が協力し「中組醸造部」を発足。県内産大豆と地元の米を原料に、木樽で仕込む無添加の味噌・醤油は好評で、昭和30年代、加工場を新設。
さらに平成元年・2年には有限会社を設立し、補助金を活用して広岡農産加工センターを建設。最盛期は年間、味噌7㌧、醤油5㌔㍑ほどを製造。地元をはじめ全国の顧客に販売してきました。
特有の芳醇な香りと奥深い味わいを引き出すのが大豆と玄米、平麦を蒸し、麹をつけて発酵させた「花つけ」。食卓に欠かせない調味料となっていましたが、近年、原材料や包装資材の価格高騰、人手不足が経営を圧迫。株主である地域住民から、廃業の声が聞かれるようになっていました。
祖父母の代から味噌・醤油づくりに携わり、定年退職後、社長を務めてきた元教員の鷹見和明さん(72)は、厳しい経営に苦労しながらも、毎年味噌づくり体験に訪れる地元のグループや、30年以上愛用している顧客から「この味を守ってほしい」と言われ事業を継続。
しかし価格転嫁には限界があり、設備の老朽化もあって、ついに撤退を決意。3人の従業員とともに最後の仕込みを行った=写真=3月8日は、得意先の要望に応じて“塩梅”し、特別の思いを込めて仕込みました。
71歳の従業員は、「姑たちは作業場に泊まり込みで『花つけ』を作っていました」と感慨深げ。鷹見社長は、「長年のご愛顧に感謝の気持ちでいっぱい。施設を活用し、伝統を引き継いでいただける方があればいいのですが」と話しています。
あぎみそは1㌔750円、しょうゆは1㍑520円で、中津川・恵那両市内のJAグリーンセンターで取り扱い。問い合わせはTEL.090(4185)9411 鷹見社長。