中津川市蛭川トマト生産組合の永冶兼明組合長(74)は、土壌病害回避と収量アップを目的に開発された「3Sシステム(ナス科果菜類隔離型少量培地耕)」の培土として、産業廃棄物となっていたヒノキの樹皮を活用。トマトを栽培し、コスト削減と収量倍増を両立させた“SDGsな生産者”として各方面から注目を集めています。
長年、夏秋トマトを生産してきた永冶さんですが、ハウス内で連作する従来の栽培法は土壌病害が発生することも多く、当時の収穫量は10㌃あたり10㌧が目標。
ところが8年前、長男の文弘さん(48)が一緒にトマトを栽培することになったため、より採算性の高い農業を目指し模索。栗栽培で技術の高さを実感していた中山間農業研究所・中津川支所=福岡=を訪れました。
そこで開発されたばかりの「3Sシステム」の圃場に案内され、トマトを植えた不織布のポットがぎっしり並び、大きな果実が鈴なりになっている様子にびっくり。簡易な装置で可能な最新の養液栽培法だと聞き、研究員から詳しく説明を受けました。
すると、スマートフォンで管理して最適量の養液を自動供給し、ポットの培土を毎年換えることで連作障害を防止。1・7倍の密植が可能なことが分かり、「効率・収益ともにアップする夢の栽培法だ」と感じ入った永冶さんは、早速、50㌃の圃場のうち8㌃をこの方式に切り替えました。
すると2年後には10㌧の目標を達成。全体の収益は上がりましたが、気になったのは、毎年、入れ替えなければならない専用培土のコスト。10㌃あたり50万円ほどかかるため、もう少し安価な代用品はないかと探していたところ、スギの樹皮でイチゴが栽培されていることを知り、井森製材(田瀬)の井森貴久さん(33)に相談。「廃棄していた樹皮を有効活用してもらえる」と喜んだ井森さんは、2㌧車で永冶さん宅に配達してくれたうえ、ガソリン代程度で提供してくれたのです。
令和3年、試しに20ポットを樹皮で栽培したところ、予想外の出来栄え。そこで昨年は6120ポットの全てを樹皮で栽培し、10㌃あたり20㌧と収穫量を倍増。今年はさらに摘果して大玉にすることで収量を増やし、10㌃あたり30㌧の収穫量を達成したいと意気込んでいます。