年間を通じて1日のほとんどを自然の中で過ごし、五感を使った直接的体験を通じて、園児自らが生きる力を学び取る中津川市蛭川の「森のようちえん くりくり」(認可外保育園)。「森を先生、山を園庭」に、異年齢の子どもたちが自然の中での暮らしを通してのびのびと育ち合う保育・幼児教育に注目が集まっています。
北欧発祥の「森のようちえん」を恵那・中津川市で初の「森のようちえん」を開いたのは市民団体「いのちもり」を主宰する古田浩之代表(50)。
関市出身の元中学校教諭で、12年前、自然と共生する暮らしと教育を目指し、蛭川に移住。手入れができなくなった山を山主の理解を得て借り受け、森の再生と子どもたちの遊び場づくりに着手。
間伐などをしながら山の材料を使い、川や沢など自然の地形を生かして整備してきました。
開園した2019年4月には5人が入園し、昨年7月、認可外保育園に。4人が卒園し、本年度は3―5歳の12人が通園しています。
子どもたちは登園し、皆で朝の会をしてからは、ほぼ自分たちがしたいように行動。火曜日は「冒険の日」で山に登り、木曜日は「土の日」で畑や田んぼの仕事を体験。「ごはんの日」の水曜日は、火おこしから始め、3歳児も包丁を持って調理しますが、あくまでも自由意志。自分で考えて行動し、「先生」ではなく、名前で呼び合うスタッフはサポート役に徹しています。
子どもたちは、5㍍ほどの落差がある沢に向かって漕ぎ出す木のブランコや、高さが3㍍ほどもある間伐材のジムなど、ともすれば危険を伴う遊具を巧みに活用。川で遊んだり、トカゲや虫を捕まえて観察したりして楽しんでいます。
外で過ごすのは、氷点下の真冬も同じ。雨の日も雨合羽を着て同様に過ごしますが、「昨年度、風邪などの病気で休んだ子どもは皆無」(古田代表)。
その代わり、擦り傷、打ち身は日常で、幼稚園教諭・保育士や小学校教諭などの経験を持つ9人のスタッフは、リスクマネジメントや子どもの救急救命法講習などを受講済。数㌶に及ぶ「森が園庭」とあって、トランシーバーを持って移動しています。
こうした中で子どもたちの自主性と生きる力、自然に対する畏敬の念や「自然とつながっている」という実感が育まれると好評で、「入園希望に応じきれないのが悩み」と古田代表。「すべてが遊びで、すべてが学び。私たちの仕事は、子どもたちの育ちの芽を信じ、子ども自身の力でできる瞬間を待つことです」と話しています。詳細はHP(「森のようちえん くりくり」で検索)で。