“次世代まで1000年生き続ける森”を目指し、企業と地元住民が共に守るリコーエレメックス恵那事業所(恵那市長島町)周辺の「リコーえなの森」。
10年以上前からSDGs(持続可能な開発目標)に取り組んできたこの活動に今、注目が集まっています。
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大手事務機器メーカーのリコーグループ(本部・東京都)は2010年、名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議COP10を機に森林保全活動をスタート。同年秋、1963年の恵那事業所建設時に取得し、その後も手付かずになっていた里山の植生調査を行ったところ、絶滅危惧種を含む多様な湿生植物が生息し、独自の生態系が残っていることが判明。
そこで翌年、同事業所社員が中心となって東京ドーム10個分(40ha以上)に相当する森林の保全活動に着手。さらに、この貴重な森林資源を地域の人々と一緒に活用したいと、2014年、地元住民の代表者、地元企業、地元NPO団体、リコー関連会社で構成される組織「リコーえなの森中山道里山協議会」(亀井三男代表)を設立しました。
毎月、第2土曜日に行われる活動では、地元のボランティアとリコーグループ社員が協力して間伐・枝打ち等を行い、枝などはチップ化して遊歩道に散布。間伐材は皮をむき、ログハウスや展望台を建築。遊歩道(2・5㌔)を整備し、学習林としての機能を加えたほか、未就学児対象の「森の幼稚園」、湿地に生息するトンボなどの観察会も開催。
保全活動の参加者には、毎回、地元の「社会福祉法人 たんぽぽ福祉会」の製品が購入できる地域通貨「たんぽぽ券」を進呈しています。
■名商大留学生も提言
さらに本年度、リコーえなの森中山道里山協議会と恵那市役所、恵那市国際交流協会が、協力団体として名古屋商科大学大学院のSDGプロジェクトに参加。オンライン形式で行われた全4回の授業には、16カ国から17人の留学生が参加してSDGsへの理解を深め、昨年末の最終授業では「リコーえなの森」の今後の活用法について発表。「”SDGsの学校”として他の事業体にも活用してもらう」など、斬新な提言が行われました。
プロジェクト参加者で、長年、リコーエレメックス社員として事業に関わり、リコーえなの森中山道里山協議会の書記会計を務める吉安尚久さん(65)は「留学生には現地の視察もしていただき、有意義な機会になった。環境保全にとどまらず、活動を通じて次世代育成やコミュニティの活性化・発展に寄与していきたい」と話していました。次回の活動は3月13日。問い合わせは090(9229)4936吉安さん。