牛をモチーフに描き続けて半世紀。「牛と人のかかわり」を風俗史として表現する画家として全国に知られる中津川市蛭川の大山錦子(きんこ)さん(82)が、丑年の今秋、集大成となる個展を開催します。
大山さんの出身地・岐阜市東部の芥見地区はかつて農村で、労働力だった牛は家族同然。同じ屋根の下に暮らし、子どもにとっては遊び相手でもありました。
大山さんは30代から牛を描きはじめ、国内外の牛の飼育地を訪問。子どもの頃の牛との思い出を軸に、日本画と漫画で、牛と、牛に関わる人を表現。41歳で闘牛の本場・スペインに渡って大学で学び、その後の延べ7年間「牛追い祭り」を取材しました。
一方、1981年飛騨牛を松阪牛と肩を並べるブランド牛に押し上げ「飛騨牛の父」と称えられる名種雄牛「安福号」に出会い、描くと同時に、飛騨牛について研究。
確かな描写力と慈愛に満ちた眼を通した表現力で高い評価を得、奥州市牛の博物館(岩手県)、東京農業大学「食と農」博物館(東京都)、但馬牛博物館(兵庫県)などで個展を開催。芸術性を備えた記憶遺産的資料として全国の関係者から高い評価を得ました。
「優しく、力持ちで、古くは役牛として人を助け、現在も皮・肉・乳まで全てを提供してくれる牛。その魅力は奥深く、いくら描いても飽きることはありません」と大山さん。
「10月1日–5日、ギャラリー・なすの花(茄子川)で開催する個展では『土佐源氏』に挑戦。ゆくゆくは藤村の『夜明け前』に登場する牛方騒動など歴史的テーマにも取り組みたい」と張り切っています。